2021/06/09 18:12



先人達の知恵を改めて知ると、驚かずにはいられない。保存食もそのひとつである。日本食において、保存食の代表的のひとつは「香の物」(漬物)だろう。
かつては、いたみやすい野菜を日持ちするようにという工夫、又は農作物がとれない冬の間の食糧として活用されてきた。地域によってバリエーション豊富であることも魅力のひとつであろう。さらに言えば、日本人にとって主食である米に合うし、お酒のアテにもなる。因みに私のオススメは、水気を切ったニシン漬けにオリーブオイルと粗挽きの黒胡椒を少々、スパークリング清酒やスパークリングワインのお供として。もしくは、いぶりがっこにクリームチーズを乗せて、スコッチウイスキーに合わせてもgood。
香の物の魅力は長期保存の過程で、発酵が進み味わい深くなることにあると思う。つまり、「時間」が香の物に魅力を与えてくれるのである。謂わば「タイムカプセル」のようなものなのだ。
パイプたばこにおいてもそうと言える。エイジングによって、たばこの味わいがより深みのあるものになる。特に、バージニア葉とオリエント葉に言えると思う。そんな訳で今回のブログでは、製造されてから凡そ8年経過した、ベントレー・オリエンタルスパイス(現商品名オリエンタルアンバー)をレビューしようと思う。誠に幸運なことに、お客様がこのたばこをお買い上げの上、分けて下さったのである。この場を借りて御礼申し上げたい。

ベントレー・オリエンタルスパイス




このたばこはかなりユニークであると言える。と言うのも、ラタキア入りのオリエンタルミクスチャーにオレンジのフレーバーが加わっているからである。オレンジのフルーティーさと酸味がどのような振る舞いをするのだろう。見所である。
缶を開けると、熟成の進んだバージニア葉のアロマにオリエント葉の発酵臭が混じる。凡そ8年という月日はこんなにもたばこ葉を熟成させてくれる。オレンジのアロマは思いの外、面影を残していてフルーティーさと酸味がある。配合比がおさえられ気味のキプロスのラタキアは僕の鼻腔を優しくくすぐった。ペリクの酸味を伴う香りは想像以上に主張が強い。カットは程よく解されたレディラブド。湿度はちょうど良い。
着火すると感じるのは、オリエント葉の発酵臭を伴う独特の甘さとフローラルさ。バージニア葉の完熟した甘さも勿論感じるが、オリエント葉の味わいの方が強い様に思える。これは、僅かに配合されたラタキアのお陰であろう。ペリクはバージニア葉の甘さを引き立てるという役割に徹している。オレンジのフルーティーさと酸味はそれぞれのたばこ葉の役割を下支えしているかの様。無意識に喫煙していると、きっとその存在に気づかないだろう。
中盤から終わりにかけて、味わいががらりと変化する。バージニア葉の優しい甘さが主人公。それ以外のたばこ葉は、後援部隊。オレンジの香味はほん僅かに感じる程度である。ひと吸いの中での味わいは、後半が面白い。前半はバージニア葉の甘さがメインであるが、後半にオリエント葉のフローラルさと発酵臭が感じられる。1ボールを通して移り変わる香喫味は飽きることを忘れさせてくれる。火持ちが良いので、気兼ねなく愉しめる。味わい豊かであるにも関わらず、ニコチンはそんなに強くない。よって四六時中味わえると言える。個人的には、少し肌寒い雨の日にいれたての温かいミルクチャイを片手に味わいたい。


ブレンド:バージニア、オリエント、ラタキア、ペリク
フレーバー:オレンジ

50g/2600円

※当店には製造されてから凡そ5年経過したオリエンタルスパイス1缶と、製造ロットが新しいオリエンタルアンバーが2つあります。お互いを吸い比べてはいかがでしょうか。興味深い違いを発見できるでしょう。