2025/01/12 11:43
※このブログは当店スタッフ独自の見解に基づいています。あくまでも参考程度にお読み下されば幸いです。
「あれ?変わっている」
メーカーやレビューサイトのホームページに記載されている説明文が変わっている事に気が付いたのは、土曜日の昼下がりであった。
ラットレー・ウォレスフレイク。様々あるラットレーの銘柄の中でもフレイクコレクションシリーズのひとつである。巷では、かつて日本市場に存在した「ピーターソン・ユニバーシティフレイク」とレシピ内容が同一である、と云われている。というのも、ピーターソン・ユニバーシティフレイクは、かつてコップ社(当時の会社名ではコールハス&コップ社)が委託製造していたが、諸事情によりSTGによって製造されているからである。
確かに、デビュー当時はレシピ内容がユニバーシティフレイクと同一であった。コップ社にとってはピーターソンブランドが会社から抜けることはビジネス的に痛い話だったのである。そこでデビュー当初は、その穴埋めとなるべき立ち位置であったのだ(この辺の詳しい話はお気軽にスタッフまで)。
ここで説明文を見てみよう。
“We would also call "Wallace Flake" the Holy Grail of flakes. Try this extraordinary creation and you will know why we are going out on a limb like this.① Virginia tobaccos, whose color spectrum ranges from golden to chocolate brown, were combined with sun-dried India and finally refined with a very fine plum aroma. ”
下線部①を読んでみよう。文章が長いので、構造を理解するために簡略化してみると
“Virginia tobaccos were combined with sun-dried India and finally refined with a very fine plum aroma.”
となる。
では日本語訳をしてみよう。
「バージニア葉各種は②インドの天日干しのたばこと組み合わされ、プラムのアロマで磨きかけられました」となる。
では一体、下線部②は一体どのたばこ葉を意味しているのだろう?
1)インド産バージニア葉を指すと仮定した場合
英文法的に違和感が生じる。「各種バージニア」と謳っているので、わざわざ別個に記す必要があるだろうか?ヨーロッパ言語は同一の表現を避ける傾向にあるので尚更である。更に言えば、バージニア葉は通常フルキュアード、熱風乾燥されることが一般的であるが、このsun-dried Indiaが特殊なバージニア葉である場合、Indiaの後にvirginiaを付けるべきてある。
この文章の文意を考えてみよう。この文の文意は、バージニア葉が他のものと混ぜ合わされたことを伝えようとしている。つまり、主語であるVirginia tobaccosとsun-dried Indiaが同一もしくは類似した物事である可能性はほとんどないのだ。
よってsun-dried Indiaがバージニア葉を示す可能性は低い。
2)インド産バーレーを指す場合
バーレー葉の乾燥方法は一般的にエアキュアードである。よって特殊な乾燥方法の場合、補足としてburleyという単語を付け加えるべきである。sun-dried Indian burleyという様に。よってこの単語がバーレー葉であるとは考えにくい。
3)インド産のオリエントでは?
オリエント葉を示す単語として一般的な単語といえば、勿論turkishという言い方があるが、
orient, oriental tobacco, oriental leaves, oriental leafなどがある。しかし、それだけではない。たばこ葉を原料葉として取引する業界においては、「専門用語」が存在する。
sun-cured, sun-cured tobacco, sun-cured leaves, sun-cured leaf, sun-dried, sun-dried tobacco, sun-dried leaves, sun-dried leaf等はオリエント葉を示すのである。
つまり、sun-dried Indiaはインド産のオリエント葉という意味なのである。
……そんな訳で、ラットレー・ウォレスフレイクのレシピ内容は、バージニア+オリエントにプラムの香り付けであることが判るのだか、実際に確かめてみないとやっぱり何とも言えない。
実際に購入し、喫煙してみた。
購入した缶の裏ラベルによると、2022年3月1日に製造されたものである。それでは、レビューしてみよう。
「缶を開けると、熟成が進んだバージニア葉の香りがメインであることに気が付く。製造から2年10ヶ月程経過していることも原因のひとつかもしれないが、プラムのフルーティーさはほんのりとしている。それ以上にフローラルなアロマの方が主張が強い。こ、これはオリエント葉だ。
この銘柄を一言で表現するならば、バラードだ。
一吸いの中で変化する香喫味。バージニア葉の深い甘味をメインに、クレッシェンドするフローラルなオリエント葉、最後に仄かに香る甘酸っぱいプラム。その世界観は切なさすら感じさせてくれる。
1ボウルのうち、中盤から後半になるにしたがって、フローラルなオリエント葉の主張はさらに強まる。一方で、プラムのフルーティーさはふわっと僅かに香る程度である。終盤になるに従って、バージニア葉の甘味が強くなるが、オリエント葉の香喫味は存在感がある。
ニコチンの強さはミディアム程度なので、時間帯を考えることなく愉しめそうだ。
個人的には敢えてブライヤーパイプではなく、メシャムパイプを使用して味わう事がオススメ。バージニア葉が魅せる甘味とオリエント葉が魅せるフローラルさをより気軽に味わえるぞ。
寒さが本格的になった今日この頃。朝に愉しむならば、ミルクティーは勿論のこと、ホットカルピスと合わせると良いだろう。夜なら、バーボンロック(ワタシのオススメはヘブンヒル)。
ブレンド:バージニア、オリエント
フレーバー:プラム
似ている銘柄:
★ペッセカヌー・オリエンタルフレイク(ウォレスフレイクよりも世界観が更に独特で複雑だが…)
★エルウッドナンバー2(フレーバーが更に強いが…)
50g/2450円」
でも一体何故、レシピが変わったのだろう?説明文もなんというか、敢えて回りくどい表現を用いている様に思える。
これは私の勝手な解釈であるが、メーカーの遊び心ではないかと思う。敢えてレシピ変更したことを公にせずに、説明文に敢えて分かりづらい表現を用いる。謂わば、メーカーが仕掛けた謎解きの様なものではないだろうか。一体いつ頃からレシピ変更されたのかは不明であるが、少なくとも2022年3月1日製造のものは以前のものとは全く異なる香喫味であった。それにも関わらず、海外のたばこ店のオンラインショップやレビューサイトでは、ブレンド内容の説明が以前のレシピのまま「バージニア+バーレー」となっている。
先入観は真実を覆い隠す。ピーターソン・ユニバーシティフレイクの生まれ変わりであるという先入観は、まるで過去の栄光の様に我々愛煙家の脳裏に焼き付いている。その結果、変化に気が付く事が出来ないのである。パイプたばこの奥深さを改めて実感した次第である。