2021/04/02 12:27

今回のブログの本題に入る前に下記の例文を読んで欲しい。

例文:
"男は吸い終わったシガレットを押し潰す様にして揉み消す。中々震えないスマートフォンは単なる無機物と化していた。灰皿の中は、吸殻で溢れかえっていて、もう置き場に困ってしまうほどだ。"

テレビドラマや映画でたばこが登場するところをご覧になった事がある方も多いだろう。
例文に登場する男は、一体どのような感情を抱いているだろう?恐らくはほとんどの方は、男はイライラしていると感じるだろう。押し潰す様にして消すシガレットは男の苛立ちを描き、溢れかえった吸殻は長い時間彼が連絡を待っていたことを描写している。たばこは時に、登場人物のキャラクター、社会背景を表現してくれる。以前見たことがある映画も、たばこに注目して観るとより物語を深く読めるかもしれない。

今回のブログではドラマや映画に登場する「小道具としてのたばこ」に注目を当てようと思う。世の中には様々な作品があるが、今回はレオナルド・ディカプリオ主演の「タイタニック」を取り上げようと思う。この映画は時代背景に忠実で、様々なシーンでたばこが登場する。タイタニック号は1912年4月15日、処女航海の末に大西洋で沈没した。

あらすじ
"物語の始まりは1996年、トレジャーハンターは「碧洋のハート」と呼ばれるダイヤモンドネックレスが入っているであろう金庫をタイタニック号から引き上げた。しかし、金庫に入っていたのはそのネックレスを身につけた女性のヌードデッサン。ニュースがきっかけで、そのモデルは「ローズ」という御年100歳のご婦人がモデルであった事が判明する。疑いを抱いていたトレジャーハンターは彼女に話を聞いてみることにした。
昨日の事のように想い出す、塗り立てのペンキの匂い、誰も使っていない食器、心地よいシーツ。タイタニックは当時の人々にとって夢のような客船であった。しかし、ローズにとっては奴隷船も同然であった………"

まず始めに、ジャックがバーでタイタニック号の三等乗船券を賭けているシーンを見てみよう。


灰がそろそろ落ちてしまいそうな位の長さになっていて、吸い口が平たく潰れ気味である。これは彼が次の一手で勝負に出よう、という様を描写している。だが、よくたばこを見て欲しい。彼が喫煙しているのは、手巻きたばこだ。糊付けした跡が確認できる。唇の大きさから推測するに、彼はかなり細巻きにしている様である。これは、彼が金銭的に貧しいことを表現している。

次のシーンは、ジャックが船尾から身を投げようとしていたローズを救出した後、婚約者の執事からもらいたばこをする様子である。


執事は丁寧に純銀製と思われるシガレットケースから一本シガレットを取り出し、ジャックに渡す。先ほどポーカーをしているシーンにおいての手巻きたばこと比べると、しっかりとした太さである。巻き具合も綺麗である。当時、シガレットは高級品であった事を示す。

続いてこのシーンは、ディナーパーティーにおいて、ローズの婚約者がたばこに火を点けようとして、マッチを忘れたことに気がつくシーンである。

この後ジャックはそれに気がついて、自分のマッチを彼に放り投げる。婚約者はかなりの大金持ちで、綺麗な形のシガレットを愛用している。普段、ウエイターや執事に火をつけてもらうことに慣れているのでは、と感じる。一方で、ジャックが彼に放り投げたマッチはかなり使い込まれた様な見た目である。

続いてのシーンは、タイタニック号設計士、ホワイトスターライン社社長との食事会の様子である。

ローズは、たばこ嫌いな母親の前でわざとたばこを吸い、煙を母親に吹き掛ける。使用しているシガレットホルダーは琥珀製なのか、それとも鼈甲製なのか。いずれにしても彼女が高貴な身分であったことを表している。それだけではない。母親に対して反抗的で、我が儘な性格であったことがうかがえる。

この映画の様に、たばこは登場人物のキャラクターだけでなく、身分の差を描写している。この映画には他にもたばこが登場するシーンが多い。改めてたばこを中心に観ると面白い発見に出会うかもしれない。