2021/05/01 14:45

テレビドラマや映画でたばこが登場するところをご覧になった事がある方も多いだろう。たばこは時に、登場人物のキャラクター、社会背景を表現してくれる。以前見たことがある映画も、たばこに注目して観るとより物語を深く読めるかもしれない。

今回のブログは、「シンシティ」に注目したい。シンシティはフランク・ミラー氏が描いたコミックが原作である。




※今回のブログには、ネタバレを多く含みます。是非「シンシティ」を御視聴になった上で、お読み下さればと思います。

シンシティという犯罪都市を3人の主人公を通して、モノクロで描かれた世界観。ストーリーのキーとなる物事をカラーで描くことにより、より深い世界観を愉しめる。フランク・ミラー氏は長い間、いくつかの映画化オファーを断っていたようである。ところがロバート・ロドリゲス氏は違った。







テスト撮影したオープニングをミラー氏に見せたのである。マリー・シェルトン演じる孤独な若い女とジョシュ・ハートネット演じる殺し屋の若い男性。この殺し屋がくせ者でターゲット(女)をその気にさせて惚れさせた上で殺してしまう、という冷酷な殺し屋である。彼の決めセリフは「たばこを吸うかい?」。差し出したジッポに照らさせる彼女の綺麗な瞳、切なさ漂う副流煙。彼女は一体何から逃れようとしているのだろう。その後の熱いキスは甘い香水の香りと共に切なさすら感じさせた。……
このオープニングを魅せられたフランク・ミラー氏は映画化にGOサインを出したそう。というか、ロドリゲス氏と共同監督になっている。
たばこは時に登場人物の孤独さや切なさを描いてくれる。








このシーンはミッキー・ローク演じるマーヴがゴールディの双子の妹ウェンディーとスポーツカーに乗りながら一服するシーンである。自分に「愛」を教えてくれたゴールディを失った哀しみ、瓜二つの双子の妹ウェンディーが咥えて点けてくれたシガレットは寂しさを物語っている。マーヴは生まれる時代を間違ってしまったのかと言うくらい、腕っぷしの強いサイコキラーであるが、女性に手を上げる様な趣味のないピュアな人物。復讐に燃える男の一服はより一層孤独感を感じさせてくれる。





このシーンは、クライヴ・オーウェン演じるドワイトが見た目がチンピラであるが実は刑事のジャッキーボーイ(ベニチオ・デル・トロ演)の死体をボロい車で運ぶシーンである。ドワイトが運転しながら幻覚に襲われるシーンが見事である。死んだはずのジャッキーボーイが笑いながら話をかけ、愛用のジッポでシガレットに着火する。愛する女性の為とはいえ、重要な役目をたった独りで受けた孤独さ、顔を変えた逃亡死刑囚という身分と警察に追われる恐怖を描写している。因みにこのシーンのみクエンティン・タランティーノが監督している。恐らくは、このシーンを見た瞬間にそれに気づくであろう。

この映画にはこれらのシーン以外にもたばこが多く登場する。小道具としてのたばこは時に、登場人物の孤独さを描いてくれる。次回の『小道具としての「たばこ」』では、クエンティン・タランティーノ監督の映画に焦点を当てようと思う。どうぞお楽しみに♪♪