2024/02/08 09:47



人生において、時に過去を振り返ることは重要である。人は過去から学び、行動するのだ。また、時々思い出に浸ることで生きるというモチベーションを保つことができる。要するに人は前へ進むために振り返るんだ。振り返るということは、前へ進もうと頑張っている人のための特権なのだ。

今回のブログのテーマは、前回までは、過去に存在したパイプたばこに焦点を当てたが、ちょっと脱線して今となっては珍しい限定パイプに焦点を当てようと思う。今後においても喫煙を愉しむためのヒントが見つかればと思う。

今回のブログにおいてフォーカスするパイプは、ピーターソンのキャッスルコレクションである。このシリーズは4本セットでの販売である。かつては、複数のパイプをセットで季節や時期を限定して販売することが珍しいことではなかった。このシリーズが限定で世に出たのは2009年。もう15年も前のことである。現在よりもブライヤーの供給量が豊富であり、ユーロ安円高であった。そう、パイプはその時の時代を映す鏡といえるのだ。原木の様子、仕上げの具合、マウスピースやリングの材質、そして価格。それらを加味した上で、パイプを手にとって見ると、パイプを異なる視点から愉しめる。

それもあってか、このシリーズは4本とも大振りなパイプといえる。アイルランドの古城の名前がそれぞれの商品名になっていることから、キャッスルコレクションと銘打ったのだろう。


当時の商品説明のためのフライヤー。このシリーズは、他にナチュラル仕上げとラステイック仕上げがあったようだ。

バーズアイ細かさ、グレインの様子が分かりやすいコントラストの具合、大きめなボウル。長時間の喫煙に向いているだけではない、木目の様子を存分に味わうことが出来る。






リングにはスターリングシルバーが使用されており、王冠のマークが凹凸により表現されている様に見える。しかしよく見ると、プレート状にした王冠をスターリングシルバーで別途製作し、ロウ付けされている様だ。そのリングの太さは、まるでごつい指輪の様だ。近年、金の価格が高騰していることがよく報道されているが、銀の価格もうなぎ登りである。そう考えると、今となっては贅沢な仕様といえる。


このシリーズが製造された2009年頃というと、ある意味ではパイプの世界において転換期であったに違いない。噛みごたえの良さから長年愛されてきたエボナイト。エボナイトは謂わば硬質ゴムである。優しい歯応えは様々なパイプスモーカーを魅了してきたことであろう。だが欠点といえば、長い年月を経るに従って酸化が進み変色してしまうことである。ちょうどこの年の前後から、各々パイプメーカーの間では、マウスピース仕様をエボナイトからアクリルへと変更することがある意味トレンドとなった。このシリーズは、Birr Castleのみがアクリル製のマウスピースである。一方他のシェイプはエボナイト製のマウスピースである。つまり、マウスピースを通して「歴史が変わる瞬間」を愉しめるのである。


ネイティブアメリカンの時代から考えれば、喫煙という文化は、長い歴史と伝統を持つ。その伝統は時代を経るに従って、姿や形を変えつつも人々に受け継がれてきた。我々が生きる現代、そしてこれからの未来もそうであろう。今の我々に出来ることは、先人たちの知恵を噛みしめ後世へ伝えることではないだろうか。そのためにも、「歴史」を味わうことは、重要なことではないだろうか。

このキャッスルコレクションシリーズのパイプに関するそれぞれ解説は、当店のオンラインサイトの商品ページを参考にしてほしい。過去を知ることで、パイプ文化への理解を深める。たばこを味わうだけでは勿体ない。