マストロ・デ・パヤ シェル スタンダード

物事は角度によって見え方が変わってくる。ここで言う「角度」とはパイプを見る角度、つまり「アングル」だけではない。パイプを正面(ボウルを左側、マウスピースを右側に置いたときとアングル)から見た時の「ボウルの角度」のことである。

多くのビリヤードパイプは、ボウルがやや前傾している。つまり、ボウルとシャンクの間の角度は90度よりも僅かに値が大きい。これは、人間が持つ視覚に大きく関係性がある。そもそも物事が「見える」とは、目で感知した視覚的情報を人間の脳みそが処理した結果に過ぎないのである。もしも角度がピッタリ90度であった場合、妙な感覚に陥ってしまう。そのパイプが窮屈さと「硬い」印象に見えてしまうのだ。かといってその角度が前傾しすぎている場合、軟派というかチャラいそして着崩し過ぎたものに見えてしまうのである。つまり、丁度良い塩梅の角度が難しいポイントなのである。

サンドブラストを深めにかけることで見えてくる、新しい真実。それはこのリンググレインの美しさである。このパイプは本来、スムース仕上げにしても差し支えなかったのかもしれない。きっと真っ直ぐと伸びるストレートグレインを愉しめただろう。けれども敢えて深めにサンドブラストを施した、大きな決断力は優れた職人だからこそ成せる業なのである。原木が持つ魅力を瞬時に見抜き、その行先をジャッジする。彼らのクラフトマンシップには敬意を表しても表し切れない。

このパイプを正面から見てみよう。9ミリフィルター対応なので、その分シャンクが太い。こうようなパイプの場合、パイプが持つ雰囲気はワイルドさが前面に出てしまうことが多い。しかし、このパイプからはその様なオーラはなく、むしろスタイリッシュで軽やかさすら感じさせてくれるのだ。そのキーポイントとなるのが、前述した通りボウルとシャンクの「角度」なのである。ほんの僅かな前傾姿勢、ちょっとした違いが大きな結果を産む。パイプの奥深さを改めて認識させてくれる一本である。

スペック

ボウルの高さ：約48mm
ボウルの幅：約39mm
ボウルの深さ：約38mm
火皿内径：約21mm
全長：約135mm
重さ：約46g

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