それは、小鳥にさえ見えた。雀がエサを啄んでいるかのようなフォルム。小ぶりな火皿に、独特な広がりを魅せるシャンク。このパイプは謂わば「ダブルチャンバー」と呼ばれる類いのパイプであり、そのカテゴリーのパイプが世界中で流行するきっかけとなったパイプのひとつと言って良いだろう。
あれは、2013年から2014年頃だっただろうか。このシェイプのパイプが世の中に登場した時、それはまさに青天の霹靂であった。これが本当にパイプなのかを疑ってしまった程である。
それから、10年以上の月日が流れた。独特な構造とユニークな仕上げの美しさを一人でも多くのパイプスモーカーに知ってもらいたい、そんな私の想いが裏目に出てしまった。マウスピースは硫化が進み変色し、パイプの正面はブライヤー製のボウルが日に焼けてしまっていた。裏正面と全く異なる色合いは、アメリカンコミック「バットマン」に登場する「トゥーフェイス」こと「ハーヴィー・デント」の様であった。
このままでは、製作者の想いを台無しにしてしまうだろう。そう感じたのだ。そこで、柘製作所の力を頼ることにしたのである。エボナイト製のマウスピースの磨き直しと、日焼けしてしまった箇所を本来の色合いに復元すること。今回の依頼は、異例なことといってよいだろう。工場長の熟考の結果、染色を重ねて調整しながら元々の色合いを復元することにしたのである。
では、パイプを見てみよう。その仕上がりは、まるで時間が巻き戻ったかの様である。10年以上前に当店の仲間になった時の姿そのものである。
このパイプの特殊な構造をおさらいしよう。
①マウスピース
エボナイト製で、アーミープッシュを進化させたような構造。マウスピースを軽く指で弾くことで取り外す。通常シャンクと呼ばれる部位には、広い空間が設けられており、煙が滞留することで冷却され、クールスモーキングしやすいのである。普通のパイプであれば、火皿からマウスピースまでの距離が短いので、燃焼温度が上がりやすく、コントロールが難しいものになってしまう。持ち運びのしやすさと喫煙のしやすさを両立させている。手に取って握った時にはじめて気が付く、まるで運命であるかの様なフィット感。
②仕上げ
特殊な技法が施されたブライヤーの表面の質感は、スムース仕上げやサンドブラスト仕上げ、ラスティック仕上げとも異なる優しい肌触りである。これは、パイプスモーカーにとって最も身近なパートナーであって欲しい、という想いが込められている。
ちょっとした時間を、贅沢に過ごす。そんな時のキーアイテムになるだろう。
スペック
ボウルの高さ:約40mm
ボウルの幅:約37mm
ボウルの深さ:約23mm
火皿内径:約19mm
全長:約90mm
重さ:約34g
※このパイプはナチュラル仕上げ、つまり染色した後にオイル仕上げを施しておりません。ですので、オーバーヒートの状態にならないように、ゆったりとした喫煙を心がけましょう。高温で喫煙すると、染色した染料が色落ちし、手についてしまう可能性があります。
※ダブルチャンバーの最大の魅力は、簡単にクールスモーキングしやすい点です。ですが、油断してオーバーヒートな喫煙をすることは避けましょう。広い空間の中で煙が急激に冷える事で、「結露」が発生しジュースが出やすくなります。
※当店で取り扱う商品は、道具として使用することを前提としております。微細な傷など状態を気になさるお客様は、必ず店頭で実物をご確認ください。よろしく御願い致します。
※ご購入前に必ず、特定商取引法に基づく表記のご確認をお願い致します。
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